「レセプト業務」は医療事務の基本

miswa_topレセプト業務とは

医療事務の仕事をするなら、必ず知っておきたい知識が「レセプト業務」。その理由を解説します。

①レセプト業務って何?

医療機関で診察を受けた際、その診療費は患者さんと患者本人が加入している保険で負担します。そのため、患者さんが窓口で支払うのは費用のごく一部ですみます。
医療機関は患者に対してだけでなく、保険の負担分も請求する必要があります。患者さんへの請求は、会計の際にそのつど行ないます。一方で、保険の請求は1か月分の請求をまとめて行なうルールになっています。

このように、診療費を請求する手続きを「診療報酬請求業務(レセプト業務)」といいます。
診療報酬の請求は、毎月「診療報酬明細書(レセプト)」を作成し、診察、治療、投薬など、患者さんごとに1か月の診療行為と対応する診療報酬の点数をまとめます(「実際のレセプト」を参照)。
レセプトは決められた期日までに審査支払機関へ提出し、審査を受けて問題がなければ保険負担分を請求できます。

「レセプト業務」は診療費を請求する手続きのこと

②診療報酬の点数

診療報酬の点数は、診療行為の難易度などに応じて厚生労働省によって決められています。
医療事務スタッフは、カルテをもとに患者さんが受けた診療行為の点数を計算します。点数を合計したら、1点あたりの単価(2010年1月現在は1点=10円)を乗じて診療報酬の金額を計算します。この金額から、患者さんが加入する保険の種類によって、負担分を計算して請求します。

また、これらの点数は2年おきに改定されます。そのため、厚生労働省の告示をもとに作られた「診療報酬点数表」で最新の点数を確認することも大切です。この点数表は、医療事務を目指すうえでも仕事に就いてからも必須のものになります。

診療費は「診療報酬点数表」で計算!

③私たちの強い味方!医療保険の種類としくみ

保険診療では、患者と保険者の双方が診療費を負担することは先ほど説明しましたが、保険者にはどのような種類があるか、ご存知ですか?

日本の医療保障制度には、教員・公務員などが加入する共済組合、一般サラリーマンなどが加入する健康保険、その他の市町村住居者が加入する国民健康保険や、65才以上で要介護、特定疾患などのある人が加入する介護保険、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度などがあります。
患者は、自分が加入する保険の種類で定められた割合の負担額を、会計窓口で支払います。
こうして、患者が全額負担する美容外科などの自由診療と違い、保険診療が効く医療機関では、一部の負担で済むようになっているのです。

保険にもいろんな種類はある

④電子レセプトについて

近年、多くの医療機関でレセプト専用コンピュータ(レセコン)が導入され、カルテをもとに入力すれば、点数が自動的に計算され、会計までできる時代になりました。
月末締めでレセプト情報が自動的に作成され、保険者に請求する書類が完成すると、CDなどのディスクに保存して提出する方法のほか、オンラインでデータ送信する方法もあります。

このように、かつては印刷して綴(と)じていた手間やコストが大幅に省け、格段に効率的になってきています。
しかし、どんなにシステム化が進んでも、多くの医療機関では一度は紙で出力し、再度確認作業を行なっています。ミスを防ぐためには人の目で確認することが重要なのです。

最後は人の目で再確認することが大事!

⑤実際のレセプト

レセプトに記載する内容は、大きく分けると「基礎データ」「点数欄」「摘要欄」の3項目です。
基礎データは「上書き」と呼ばれ、名前など患者さんの個人情報、保険の情報、傷病名など13項目あります。点数欄には、診察するごとに診療行為の回数と点数を記載し、最終的に1か月分の合計点数を記載します。

摘要欄は、どのような診療行為を行なったのか、内容と回数などを記載します。基礎データの傷病名などが記入しきれない時にも使用します。
これら3項目を、間違いのないようレセコンに正しく入力することが大切です。

レセプトは「基礎データ」「点数欄」「摘要欄」の3項目を記入

⑥レセプトはダブルチェックで確認!

レセプトの確認はとても重要です。審査支払機関で記入漏れや間違いが見つかると、レセプトが戻されてしまいます。これを「返戻(へんれい)」といいます。

戻されたレセプトは、正しく修正して再請求すれば大丈夫です。
また、診療報酬のしくみはとても複雑です。レセプトを正しく作ったつもりでも、審査支払機関から、点数が減点されて戻されるケースがあります。
このような場合、担当医師が診療行為の理由を記入し、再請求しなければいけません。
レセプトの間違いや減点は、診療報酬の支払いが遅れる原因になり医療機関の収入に影響します。

ですからどの医療機関でも、医療事務スタッフと担当医師のダブルチェックで、ミスを防ぐ努力が行なわれています。

レセプトはミスがあると戻される

⑦診療報酬請求書の作成

レセプトの点検が終わったら、請求する保険の種類ごとに分けます。つまり、国民健康保険なら国保だけでレセプトをまとめ、合計点数や件数をまとめます。
そして、点数や件数などの必要事項を書類に記載し、レセプトを決められた順番に並べて提出します。この書類を、「診療報酬請求書」と呼び、請求する保険団体ごとに1枚ずつ作ります。

最近は、レセプトをデータで管理し、CDやMOなどの電子媒体で提出する場合もあり、作業そのものは簡単になりました。しかし、月末から提出期日まであまり期間がないので、請求時期の月末月初は業務が慌ただしくなるようです。

提出の仕方やレセプトの並び順などに決まりがある

⑧診療報酬請求のしくみ

まずは提出時の決まり事として、医療機関の規模の大小や種類に関係なく、毎月10日の締め切りまでに診療報酬請求書とレセプトを審査支払機関へ提出します。
次に、審査支払機関で審査が行なわれ、問題がなければ審査支払機関から保険者に請求が行なわれるしくみとなっていることを知っておきましょう。

このようなしくみになっていることから、診療報酬の支払いも、保険者から審査支払機関へ、さらにそれぞれの医療機関へ支払われます。そのため、実際に診療報酬を受け取るのは、レセプト提出から2~3か月後になります。
一方で、審査で問題があった場合は、「返戻(へんれい)」といって医療機関にレセプトが差し戻されたり、査定(減額)されることがあります。

返戻(へんれい)の理由は、点数、保険証の記号や番号の不備、診療内容と病名の不一致など、単純なミスが多いようですが、差し戻されたレセプトは修正し、再請求を行います。査定(減額)については、6か月以内に医師と相談のうえ、再審請求を行なえます。

返戻(へんれい)により、診療報酬の受け取りが遅れたり、査定(減額)されてしまうと医療機関の収入面に大きな影響を与えかねません。そこで、整理簿を作り減点箇所や修正箇所を管理し、同じような返戻を防ぐための改善に役立てます。
こうした意味からも、医療事務スタッフは、収入面で経営を支える重要なポジションといえます。

レセプトは毎月10日までに提出!

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