訪問看護ステーションけせら勤務
橋本さん
今回は、文京区の訪問看護ステーション「けせら」(以下「けせら」)で、設立当初から事務を担当されているキャリア17年の橋本さんに、介護医療事務のお仕事を始めるきっかけや、ステーションでのお仕事内容についてお話を伺いました。
介護事務を目指したきっかけ
三澤:このお仕事をされる以前は出版業界にいらしたということですが、出版のお仕事から介護医療事務(以下・介護事務)への転職は、どのようなきっかけがあったのですか。
橋本:私は出版社の辞典などを編集する部署で働いていたのですが、辞典の編集って数年がかりになることもあって、担当している本が出版されると仕事がひと区切りつく部署だったんです。
ある時ふっと仕事が空いて、「これでいいのかな?」と、将来のことを考えてしまったんです。
出版の仕事は何歳まで続けられるかわからないですし、その時期に父が脳梗塞で倒れて自宅で療養することになって、自分や家族のことを考えると事務仕事のような堅実な職種がいいのかなと考え始めていたことが転職のきっかけになりました。
三澤:たしかに、出版のお仕事って時間も休みも不規則なイメージがありますから、ご家庭のこととの両立は難しそうですね。
ちなみに、橋本さんが転職を考えたのっておいくつぐらいの時だったんですか?
橋本:30代後半でした。
三澤:一般企業の事務でなく、どうして介護事務を?
橋本:年齢的にも在宅で家族の介護をしていたこともあり、これからの高齢者問題に興味を持っていたんです。
でも、私は医療事務資格を持っていませんでしたし、未経験で年齢的なこともあるし、仕事も見つからないだろうなって思っていました。
現在のお仕事を見つけたきっかけ
三澤:そのような状況の中で現在のお仕事に就けたのは、何かきっかけがあったんでしょうか?
橋本:事務の仕事を探し始めた時に、区報にインターネットを使った受付業務の募集が出ていたんです。医療系の仕事ではありませんが、区の仕事だから安心して働けると思って応募しました。
でも、応募者が多く結局不採用になってしまいました。あきらめかけていた時に、区の医師会(以下・医師会)で事務に欠員が出て、「3カ月ぐらい働いてみないか?」という電話がきたんです。
三澤:それは驚かれたんじゃありませんか?
橋本:ええ。突然の電話に私自身とても驚きました。面接の時に父が倒れたこと、それがきっかけで介護に興味を持ち始めていたこと、編集の仕事は時間も休みも不規則で父の面倒が見られないことなどを話したので、それで私のところに連絡がきたのかもしれません。
三澤:医師会で働かれてみてどうでした?
橋本:仕事を始めてみると、出版社で働いていた時とは、時間の流れがまったく違うことに驚きました。
出版社にいた頃は数年がかりで本を編集するので、長いんですね仕事のスパンが。
それがこの仕事を始めてみると次から次にやることがあって、一週間、一カ月、一年過ぎるのがものすごく早くて、気づいたらすでに10年以上経っていたという感じです。
三澤:出版業界も時間が不規則で忙しいと思いますが、またそれとは違う忙しさがあり、橋本さん自身もこの業界が初めてで、すべてが新しい事で刺激になったんじゃありませんか?
橋本:やっていて楽しかったですね。まったく違う業界で、しかも自分が興味ある仕事で。こういう世界があるんだってことで毎日がとにかく新鮮でした。
三澤:お父さんが倒れられて自宅で療養された。そんなことが大きなターニングポイントになったんでしょうか。
橋本:そうですね。やはり父のことは大きなターニングポイントになったと思います。そしてタイミングよく医師会で仕事ができて、今振り返ってみても運がよかったと思います。
三澤:「けせら」で働くことになったのはどんなきっかけが?
橋本:医師会で働き始めて半年ぐらい経った時に阿部(「けせら」所長)と知り合ったんです。
その後、しばらくして阿部が訪問看護ステーションの管理者をやることになったので、それで一緒に「けせら」を立ち上げることになって、それからは本当にあっという間に時間が過ぎました。
取得した資格について
三澤:資格のことについてお伺いしたいのですが、橋本さんは学芸員資格とアロマ資格をお持ちだそうですが、介護事務をされている方で学芸員資格をお持ちというのは珍しいですね。
橋本:大学が美学美術史科でしたから、在学中に資格を取ったんです。この学科を専攻すると、学芸員資格か教員免許のどちらかを取っておく雰囲気があったので、なんとなく取った感じです。
三澤:そうだったんですね。では、アロマの資格というのは?
橋本:板橋区にある訪問看護ステーションの所長さんに教わって資格を取りました。介護事務の仕事と直接関係はないのですが、気分をやわらげたりもできるので、介護の仕事には何かと役立つこともあります。
三澤:介護事務や医療事務の資格は取らなかったのですか?
橋本:医療事務資格を取ろうと考えた時期もあったのですが、この仕事って結局自分で覚えるしかないですからね。でも、自分で勉強すればそれが一番理解出来ますからね。慣れてくれば自分なりにやり方もわかってきますし。
三澤:スキルアップを実感できるのってすごく嬉しいですよね。仕事のモチベーションにもなったり。それに、いろいろ資格がありますけど資格がなくてもスタートできますからね。
橋本:この業界は診療報酬と介護報酬の改正が毎年交互にありますからね。改正する度に覚え直さなきゃいけなかったりして、医師会で医療事務をはじめた当初は国保とか社保とかいろんなところに電話して確認しながらやっていました。
担当業務で大変なこと
三澤:先程のお話でも少し出てきましたけれど、このお仕事を担当されていて大変に感じるのはどんなことですか?
橋本:「けせら」の事務スタッフは私だけなので何かと大変なんですけど、しいて言えば一週間、一カ月、一年間のスケジュールが決まっているので、長期休暇がなかなか取れないことですね。
三澤:それはこの業界で働く人が全員感じているかもしれませんね。
それでは反対に、このお仕事をしていて遣り甲斐を感じるのはどんな時ですか?
橋本:この仕事を始めてもう17年ですから、今となっては遣り甲斐を見出すことも少なくなりましたけど、新しいことが次から次に出てくるので常に刺激になるのはいいですね。最近は年齢的に新しいことを覚えるのが大変になってきましたが(苦笑)。
他の医療者と働くうえでの心がけ
三澤:「けせら」では、看護師さんやヘルパーさんなども多いと思いますが、他の医療者(スタッフ)と働くうえで心がけていることを教えていただけますか?
橋本:自分の出来ることと出来ないことを、他のスタッフにはっきり伝えるようにしています。
スタッフも増えて来てそのぶん利用者さんも増えているので、各スタッフが自分でできることはなるべくやってもらわないと、私一人ではとてもこなせませんから。
互いに意見を出し合いながらチームワークをもって働いている訪問看護ステーションの事務室。
三澤:「けせら」には何名のスタッフがいるんですか?
橋本:看護師が15人、ヘルパーが8人、ケアマネが5人です。でも兼任している人もいるので、実質22人ぐらいです。
当初は所長の阿部も含めて3~4人でしたから、事務的な雑用もかなり増えました。だからこそ私は私の立場で、他のスタッフはその立場で、互いに意見を出し合った方がいいと思っています。
現在の職場に勤務してよかったこと
三澤:現在の職場に勤務してよかったことを教えてください。
橋本:介護で苦労している家族がたくさんいることを知れたのはよかったです。
私もそうですけれど、家族の介護をしていると「どうして自分だけ苦労しなきゃ」って息詰まったり疲れたりすることもあるんです。
でもこの仕事をしていると、他にも同じような境遇の方が多くいらっしゃって、介護されている方だって家族だからわがままを言えて助かっているってこともわかりました。
苦労を抱えこまないで、訪問看護や訪問介護、施設をその時どき使えばかなり負担が軽減するとわかったことは本当によかったです。
介護事務を目指す方へ
三澤:それでは最後に、これから介護事務を目指す方へ、先輩として橋本さんからのメッセージをいただきたいと思います。
橋本:私から言えるのは、この業界に興味があるのなら迷わず飛び込んできて欲しいということですね。この仕事に向いているかどうかなんて、やってみないとわからないですから。
三澤:年齢が上の方や経験がない方は、介護事務に興味を持っていても一歩踏み出せないことも多いと思うんです。
でも、年齢が上がるほどご家庭で医療や介護に携わる出来事が増えると思いますし、さまざまな経験をされていろいろなことがわかったうえで利用者さんと接することができるようになると思うんです。
ですから、「興味があるなら迷ってないで飛び込んでみて」という橋本さんのアドバイスは、きっと多くの方に共感いただけると思います。ありがとうございました。
◆訪問看護ステーション「けせら」勤務:橋本さん
53歳・女性
勤務形態:正社員
医療事務歴:17年
取得資格:学芸員資格、アロマ資格
資格取得方法:-
勤務先:訪問看護ステーション「けせら」
東京都文京区本郷2-4-1
03-3815-1170
お仕事内容:介護医療事務
勤務時間:週5日、9:30~17:30
職歴:出版社の編集職
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