地域医療を盛り上げる役割を目指して!

interview06_01総合病院 厚生中央病院 勤務

菅谷和明さん

医療事務のお仕事には、「レセプト業務」だけでなく、とても幅広い役割があります。そこで今回は、目黒区にある厚生中央病院の医療連携広報室で働いている菅谷さんに、医療連携広報室ではどんなお仕事をされているのか、また、医療事務のお仕事とどのように向き合っているのか、現場の声を聞いてきました。

正反対の立場から見た医療事務

三澤:現在、菅谷さんは医事課医療連携広報室で正職員として働いてらっしゃるそうですが、こちらの病院で働く前は、全国土木健康保険組合にいらしたそうですね。

菅谷:はい。土木建築業に従事する事業所が加入している国民健康保険組合で、保険給付に関する仕事を担当していました。

三澤:保険組合のお仕事というと、保険に加入している企業の社員や、そのご家族の健康をサポートする、そんなお仕事をされてきたのですか。

菅谷:そうですね。私たち保険組合の職員は、被保険者の方が病気やケガをしたり、出産、死亡した場合に医療費を負担したり、いろいろな給付金を支給することが基本の仕事です。
その他にも、健康診断の助成など健康の保持・増進をはかるための事業も行っています。ですから、被保険者の方に健康的な生活を送ってもらえるようにサポートする仕事とも言えるかと思います。

三澤:医療のお仕事というと、ドクター、看護師、医療事務など、病院で働く方にスポットが当たりやすいのですが、健康保険組合のようにまた違った立場で医療に携わる仕事もじつはたくさんあるんですよね。

菅谷:はい。でも、3年前に組合の人事異動で当院に配属になって、実際に病院の事務の仕事を経験してみると、今までとは立場や環境が大きく違うことに驚きました。

三澤:どのように変わられたのですか。

菅谷:「病院」と「患者さん」という関係を考えた場合、保険組合の業務は患者さんのサポートをする立場でした。それが病院側の立場で働くことになったので、視点が大きく変わりました。
一人ひとりの患者さんと顔を合わせるというか、今までより近い距離で、医療の最前線でサポートする立場に変わった気がします。

三澤:でも、違う視点を経験されてきたことは、ご自身にとっても大きな強みになるんじゃありませんか。

菅谷:患者さんから医療保険制度について聞かれることも多いので、これまでの経験が自分の強みになっているんじゃないかって感じます。
それと、保険組合の仕事をしている時も、病院や医療事務の方との接点はあったのですが、実際に医療の現場で仕事をしてみると、事務がいないと病院がうまく回らないこともわかりました。
医療事務が果たす重要な役割を日々実感出来ることは、仕事に対するモチベーションとなっています。

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医療連携広報室のお仕事

三澤:菅谷さんとはじめてお会いした時、笑顔がステキでとても親しみやすい印象の方だなって思ったんです。
だから、菅谷さんが医療連携広報室で働いているって聞いて、ピッタリな感じがしました。

菅谷:ありがとうございます。
でも、私は医療の現場で働きだして日が浅いので、知識と経験が不足しているなって感じます。
他の病院の連携室で働いている方とお話する機会もありますが、深い議論に入っていけなかったりする場面があると、勉強の重要性を実感させられます。

三澤:医療連携室は病院の中でも新しいポジションですから、期待とプレッシャーもあわせ、試行錯誤の連続かもしれませんね。
それでは、連携室でどんなお仕事をされているのか、かんたんに教えていただけませんか?

菅谷:医療連携広報室は、さまざまな業務があるのですが、大きく分けると4つあります。
近隣の診療所などからご紹介いただく患者さんの予約を取ったり、検査の予約を受けたりという事務の業務がひとつ。
それから、MSW(医療ソーシャルワーカー)が2名所属しているので、患者さんの相談を受けて要望に応える業務。
そして、入院患者さんが円滑に退院出来るよう、退院調整業務の役割もしています。
4つめが、病院から情報発信をする広報業務です。

三澤:菅谷さんも退院調整業務をされるのですか。

菅谷:いえ、私は管理者として全体を見る役割なので、事務的な業務を担当しています。

三澤:広報のお仕事はどのようなことを?

菅谷:多くの患者さんが当院を利用してくれるように、病院の広報誌を作ったり、ホームページで情報を発信したり、当院の医療サービスを周知することと、医療を身近に感じてもらう仕事ですね。

三澤:こちらでは、地域のみなさんを招いて「健康セミナー」などもされているそうですが、そういったイベントも広報として担当されるのですか。

菅谷:そうですね。区が主催していた「健康フェスティバル」が廃止になってしまったので、当院が引き継いで開催しています。

三澤:地域に根差した医療サービスや、病院からの情報を発信するということは、とても大切ですよね。

菅谷:でも、まだまだ足りないので、もっと周知活動をしていくことが今後の課題だと思っています。

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医療事務に必要なこと

三澤:それでは、菅谷さんから見て、医療事務に向いているのはどんな方だと思いますか。

菅谷:やはり、いちばん重要なのはコミュニケーションが出来る人だと思います。
当院で医療の現場を目の当たりにしてみて、改めて気づかされたことがあります。それは、病院は医師や看護師、コメディカルといった、さまざまな資格を持った方がたくさんいることです。
病院のスタッフといっても、役割やスキルがそれぞれにまったく違う。異職種の方たちが集まって一緒に業務を行なっているので、円滑に業務を進めようと思うと、事務である私たちが積極的にコミュニケーションを取らないとダメなんだと感じます。
予期せぬことがいろいろと起こりますし、それぞれの状況にマニュアルがあるわけでもないですから。

三澤:そういう意味では、医療事務ってこれまでの経験測による判断がとても反映されるお仕事ということですよね。

菅谷:そうですね。違う業種で経験してきたことが、不測の事態に遭遇した時の応対に出るのだと思います。

三澤:菅谷さんのように、医療事務は3年目でも、40歳というご年齢でこれまでに多くの経験をしてこられた。そういう土台があるからこそ、日々起こる不測の事態に迅速に対応出来るという部分はありますよね。

菅谷:年齢や役職もあり、職場で求められる責任は大きいので頑張らないといけませんね。

三澤:私はこれからの時代、医療連携室が病院の要になるポジションだと考えているんです。
近隣の診療所と病院をつなぐ役割と、患者さんと病院をつなぐ役割を担っている。将来的には、連携室を見れば、その病院のことがわかるようになっていくんじゃないかって思うんです。

菅谷:病院を取り巻く医療の世界は、どんどん専門性が高まっていて、細分化が進んでいるので、ひとつの医療機関で患者さまの病気をすべて診る時代じゃなくなっているんです。
患者さまひとりひとりに最適な医療が提供出来るよう、他の医療機関との連携をはかることが重要になると思います。

三澤:今はまだ、病院の中で事務部門の位置づけが低い場合が多いけれど、連携室が院内と院外に対して及ぼす力というのも徐々に大きくなってきています。
病院がもっと円滑に機能するためにも、連携室や医療事務のポジションを、今よりもっともっと高めていかないといけないんですよね。

菅谷:そうですね。日々、目の前の業務と向き合うことで精一杯な部分もあるのですが、10のうち9が大変でも、患者さまから感謝の声が聞けたりすると、苦労が吹き飛んでしまうぐらいの充足感があります。
そういう残りの1の部分の喜びや達成感が大きいから、この仕事を頑張れるんです。
連携室に来て3年が経った今だからいえるのですが、毎日楽しいことばかりだと、それが当たり前になって、幸せなのに幸せを感じられなくなってしまうと思うんです。
でも、大変なことの中にある喜びが、仕事のやりがいにつながるのだと実感しています。

三澤:小さな1でも、その1に希望が持てると大きなモチベーションにつながると。

菅谷:大変なこともありますが、日々、小さな喜びも必ずある。その喜びを感じられるようになるには、ある程度の経験が必要なのでしょうね。

三澤:まだ若い方や人生経験が少ない方だと、先に待っている希望を見出すことができず、目の前の現状に挫折してしまうことがあるかもしれませんね。

菅谷:どんな仕事でも同じだと思いますが、病院の仕事は患者さんの命や健康を預かっているので、ラクに働けることはないんですよね。大変なことも多いですけど、命の重みを預かっている仕事だからこそ、積み重なった喜びが、将来的にとてつもなく大きなものになると思います。

三澤:病院側と患者側の両方の立場で仕事を経験されている菅谷さんは、フレッシュな視点や感覚をお持ちだと思います。
これからは、患者側に立った医療サービスを提供出来るような方が、病院や地域医療を盛り上げる存在になると思うんです。
未来に向かってがんばっている菅谷さんの姿が、このお仕事を目指している方たちに勇気を与えてくれると確信しました。
本日はありがとうございました。

◆「総合病院 厚生中央病院」勤務:菅谷和明さん
06prof40歳・男性
勤務形態:正社員
医療事務歴:3年0ヶ月
取得資格:-
資格取得方法:-

勤務先:総合病院 厚生中央病院
東京都目黒区三田1-11-7
03-3713-2141 (代表)

勤務先:全国土木建築国民健康保険組合
お仕事内容:医事課 医療連携広報室
勤務時間:月~金9:00~17:00、土曜日9:00~14:00
職歴:在職中

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